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おなじことをなんどでも書く

♪:明星



〈振り向けばほら涙になるから 愛しき日々を笑えよ〉
ここが好きですね


▼0721の雑記



MUCCの明星という曲を聴いている。結局さとちってもう脱退したんだっけか。まだライブは延期してるんだっけか。そんな情報すらもう分からなくなってしまった。

Spotifyでシャッフルして出てきた表題曲、ムックの中でも格別に好きな家路という曲に似ていていいなと思った。
高2の夏、海側の湿った暑い日々を自転車で風に向かいながら走るとき、ずっと家路を聴いていた。高校までの通学路、高校から家までの帰り路に落ちている蝉の死骸を数えながら。意識していたわけでもないのに毎日の往復を、前日の数も忘れずに一夏中ずっと。のべ47匹。未だに覚えている。楽曲に残る鮮明な、触れれば開く箱の中の記憶。そういう箱がたくさんある。わたしの家路は蝉の死骸の記憶だった。
高校時代はムックばっかり聴いていた気がする。
家路の印象があまりにも強いからか、ムックは夏の午後と夕方の間のイメージが強い。水分を孕み、じめじめとした嫌になるような地元の暑さ。暮れるまでの刹那、影が飲み込まれる前の一瞬の時。生の人間の高めの体温。現実の今の筈なのに過去のような景色。嫌でも永遠になってしまうその肌感覚。

明星というアルバムの曲順が家路に始まり明星に終わるのは出来すぎているなと思った。当然狙っていて、漏れなく弾に当たり、わたしも死ぬ。
CDを買うことは多分もうないだろうけど、ものすごく久しぶりに楽曲を買った。いつ以来だろうか、音楽にお金を出すのは。ダウンロードは待たなくていいよね。唐突にまた聴きたくなって。無料でシャッフルで聴くには惜しくなって。今夜はこの曲だけをずっと聴いていたくて。


苦しい歌詞だ。喉が詰まる。脱退のことがなくたって苦しいのに、脱退の背景とそこまでの旅路を少しでも知っているとたまらないものがある。誰が詞を書いたのかと検索してみればそこにはバンド名が掲げられていた。ますます息が出来なくなる。

明星を聴く度に「さとち、辞めるのやめないか」と思ってしまう。わたし自身にムックへの強い思い入れが少ないからか、無責任にそういう言葉が出てきてしまうのだ。心置きなく惜しめてしまうんださとちのことは。辞めないで、と喚いても許されるような気がしてしまう。ごめんね。こんな言葉、言われる度にきっと苦しむのに。でもさとちなら言っても受け止めてくれるんじゃないかって思っちゃうんだよね。


何度も見てきた。わたしが好きになったバンドやアーティストは、ほぼ全てのグループがメンバー脱退をしている。唯一の例外のグループは活動を休止した。自分が疫病神なのかと思うくらいだ。単純に続けていくのはそれほど難しいということなのだけれど、毎回毎回傷つくよ。悲しくて。こうして生まれる楽曲があまりにも美しくて。どうにもならなくて。どうにもならないと理解させられる度にいちいち泣いているんだ。涙は乾くけれど枯れることはない。

永遠に「好き」が続くことなんてないとわたしは身をもって知っている。元々好きになった瞬間からずっと「終わり」のことが頭にある。片隅に鎮座するどころか真正面で腰を据えて待っているんだよ。だからいつか終わるこの好きをどう過ごしていこうかと考える。どうすればよかったのか。未だに答えは出ない。答えなんてあったのかすら。見つからない。
今は時々迷子のような不安な気持ちになる。「終わり」があったとしても、それが待っていてくれるなら、例え不幸せな結果であったとしてもそこまでは歩いていけるから。だけどそれすらなくなってしまったらわたしはどこを目指して歩いていいか分からない。分からないんだよ。

膝が折られる。前に進む前にお願いだから一度立ち止まらせて転ばせてくれ。そうじゃないと立てない。泣いてもいいと言ってよ。笑わなくてもいいって。お願いだから。

どうすればいい。どうすればよかった。後悔はないの。でもやっぱり「正しい」のがよかった。「正しく」ありたかった。出来るだけ「正しさ」がほしい、今だって。今も。正しくなければ許されない。誰にも許してもらえない。



寂しいよ。心を劈く言葉だ。ずっと寂しい。物心ついたときからこの気持ちが満たされたことがない。せめて正しくなれれば自分の孤独も正しいことに出来るんじゃないかと思った。正当性もない孤独なんてやっていられないからだ。やっていられるわけがない。
永遠が欲しかった。自分では作れそうもないから他人が作るものでもいいと思った。それ自体が間違っていることも、そんなものどこにもないってこともどこかで解っていたはずなのに。選んでも選んでも何も。結局わたしがわたしでいようとする限り駄目なんだよ。だから早く死にたい。だから早く死にたいの。もういいんだよ。もういいでしょう、充分でしょう。あと何回こういう夜を過ごしたら許してくれる?