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おなじことをなんどでも書く

「同床異夢は仕方のないことだ」

 

 

 

脱退があった後、個人的な体感としては比較的早くバンドを動かしたなと思った記憶がある。半年も空かなかったはずだ。そもそもどうしてあのバンドを諦めようと思ったんだっけ、と思い返してみたけれど、やはりわたしはあの4人がガチャガチャのバランスで今にも崩れそうに揺らぎながら、どこか泰然自若と在ったところに夢を見ていた節があった。最初は始動をそれなりに喜んだ。作品が好きでライブが好きでギタリストが好きだったから続くことは嬉しかった。でも3人になって最初のライブを見たときに、閃光のように「駄目だ」と思った。ここにいたくないという強い衝動があった。振り返ったライブハウスの後方は、目を疑うほど、未だ鮮明に真っ暗で真っ黒だった。三点では平面は決定され安定してしまう。それが苦しかった。好きでいたがる気持ちを殺して、諦めきれない気持ちを押しやって、戻りたい気持ちを閉じ込めて、そうして無理矢理終わらせたんだった。

それから「この〇人で」「ここにいる俺らで」そういう類の言葉への一切の希望を捨てた。バンドにもグループにも結束を見なくなった。その瞬間は間違いなく事実であってそれがどんなに素晴らしいものでも変化しないものはどこにもない。この先もずっと同じだと信じたから裏切られたと思ってしまった。期待して叶わなくて吐き捨てるそんな馬鹿げた一人相撲を取るくらいなら最初から白眼視していた方が傷付かない。尊いことはまあ認めてやる。素敵なことなんだろうと傍らに思ってあげる。でも感謝も信頼も絶対にしない。もう二度と偶然を、危うい奇跡を有難がったりしない。わたしには響かない、自分を守れればそれでいい。人間ってみんなひとりだからね。溶け合うことはない。だからやめた。もうやめた。

なのに毎回千切れそうな気持ちになる。あの終幕を思い出し、信じた人たちの気持ちに寄りたくなって。余計なお世話どころか甚だ迷惑だと解っているのに飽きることなく塞がったはずの傷をさすり、こうして言葉を続ける。

 

好きな漫画作品の台詞に「同床異夢は仕方のないことだ」という言葉がある。自ら出す言葉より誰かの言葉の引用が薬になるから何度も唱える。仕方のないこと。しかたのないこと。そしてこう続く。「どんなに近くにいても互いを想い合っていても 望む夢は同じではない」。止められない。戻れない。帰れない。あなたたちはいつだって優しくて、あたたかくて、そして涙が出るほど無慈悲。