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おなじことをなんどでも書く

いわばこれはエレジー






自分が苦しんできたことで他人を傷つけようとして溜飲を下げている






明確に「もう戻れないな」と思った。いやもう戻れたとして戻ろうとは思わなくなってしまったけれど。泣かなくなって自分ではなく他人を恨むようになって驚くほど楽になった。好きではない人間に嫌われようが実質的な危害が及ばないならどうでもいいかと思えるようになって自分の思う通り振る舞うようになったときから信じられないくらい生きやすくなった。それでよかったんだろうか。環境が悪いのは本当、人手は増えることなくやることだけがひたすら増えていく、偉そうに、毎日毎日自暴自棄、愚痴と陰口のオンパレード。やりたくない帰りたい、そして馬鹿馬鹿しい。何だこのくだらなさ。こんなはずじゃなかったのにどうしてこんなになってしまったのか。投げ棄てたい、生活を維持する程度の。すべてを放り出せる程ではない生易しい程度の。そういう自暴自棄だ。金だけください!大した出来でもない化けの皮さえ剥がれ、醜悪な本性の露呈、隠していたかった、優しくて思いやりがあって、そう、わたし聖人君子になりたかったんですよ昔。

きっかけが欲しくて古びたWALKMANの電源をつける。車載用にしていたiPodは随分前から接続されなくなってしまって暫くあのバンドもこのバンドも耳にしていない。20年くらい前のものだからもう繋がらなくたって仕方がない、WALKMANだってもう10年物だ。動くだけ、動くだけ。その10年前に何度も何度も歌詞カードをめくり、聴いては心が動いて生で聴いては泣いていた曲を今聴いている。懐かしいとかああこれこれとかそういう感慨をうっすら或いは白々しく思ったあとに、昔大切だったワンフレーズに違和感を覚えた。共感よりもっと強く、信仰よりも敬虔に、恋よりもどぎついほどに、何よりも惹かれずにはいられなかった言葉たちを、他人みたいに老いたみたいに、 眩しい と思った。最早自分の事ではなくなってしまっていた。わたしには空の色さえ分からない。

明確に「もう戻れないな」と思った。
思い出がもうひとつ、いま死んだ。望んでいたことだったけれど、望んでいた形ではなかった気がする。取り返しが付かないことをしたくないといろんなことに二の足を踏み、感情に蓋をした。見ないふりをした。自分に出来る気がしなかったから。強がって諦めてそれでも折れないふりをしていれば立っていられた、それだけだ。そうして通り過ぎていった数々の重要だったポイントこそがもう取り返しがつかない。それで良かったのか?嘘でも平気だと良かったと言うしかない。それが間違っていたと思えばそれこそここで終わらせるしかなくなるから。間違っていなくても、出来るだけ早く終わらせたいけれど。

自分が苦しんだことで他人を傷つける。溜飲が下がる、それだけ。復讐なんだろうこれは。なんにも出来なかった自分を救うための、みじめな、八つ当たり。恨めしい、羨ましい、わたしはいつだって他人が憎い。わたしはわたしじゃなくなりたい。だから他人が嫌いなんだ。傷つけ、お前も、お前も。わたしが味わった苦しみをお前も味わえ。可哀想だなあ、もういい。本当にもういいんだよ。うんざりだ。ここにいたくない、性根の腐ったのがどんどん表に出てしまう。ここから出たい、歪であっても化けの皮を被っていたい、出来損なっても聖人君子気取りでいたい。そうじゃなきゃ私は本当に化け物だ。外見だけではなく中身まで化け物だなんて、ああ、うん、そうだ、結論はいつだって、いつだって早く死にたい。それだけだ。わたしがわたしでなくなるためには、わたしはそれしかおもいつけない。